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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页
「とにかく私の家までいらっしゃいませんか、ゆっくりと火星の果実の話をしましょうや、如何です?」
その男は、落着いた、幅のある声であった。
「何処、でしょうか。あまり時間もないんですが――」
「いや、ついこの先きですよ、ほんの荒屋ですが」
「そうですね」
大村は、一寸英二の顔を見かえして
「そうですか、じゃ一寸お邪魔しましょうか……」
その男は、もう大村たち二人が、来るものと決めてしまっているように、先に立ってすたすたと歩き出していた。
火星の魔術師
そして、また例の化物畠のわきを通り抜け、その向うのこんもりと茂った常磐木の森の中の道を行くと、すぐ眼の前が展けて、其処に、その森を自然の生垣にした一軒の藁葺の農家が、ぽつんと建っていた。
案内されるままについて行くと、その藁葺の農家は、なかはすっかり洋風に造りかえられてあって、椅子やテーブルが設えてある。ちょっと地方の新しがり屋――といったような感じの部屋だった。尤もそれはほんの最初だけの感じであって、すぐそんな上滑りの気持は棄てなければならなかったけれど……。
志賀健吉と名乗るその男は、こうして見ていると、初め中年と思っていたのは間違いで段々若くなって来るように思われる。