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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

二ノ六

「まあ、森を見てたの、あんた詩人ね」

この可愛い、おませさんは、何処で憶えたのか、こんな事をいった。黒吉は、返事が、考えつかなかった。

「ほんとに綺麗な森ね、黒ちゃんは森が好きなの。綺麗だから――」

「ううん、森なんか嫌いだい。君の方が綺麗じゃないか」

「まあ――」

葉子は、如何にも女の子らしく、嬉んで、大きな眼を開けた。

「だけど、俺は醜いからなア……。遊んでくれる」

彼は、少しずつ口が听けるようになった。

「遊ぶとも」(葉子は、時々乱暴な言葉を使った)

「黒ちゃんは穏和しいから好きよ。ゆうべだって……」

「えッ。知ってんの――」

黒吉は、思わずビクッとした。

二ノ六

「驚かなくたって、いいじゃないの。あたしだって、接吻初めてよ」

黒吉は、顔がカーッとほてるのを感じた。そして、この十位の幼い少女が、こんな事を、あけすけにいうのか、と思うと、この愛らしい姿の中に、悪魔が宿っているのではないか、と思われた。如何に、荒んだ周囲の中に育ったから、とはいえ、恐ろしい事だった。

「いつ来たの、ここへ」

彼は、返事に困って、こんな事をいった。

「あんたが上っているのを見たから、直ぐ後から来たのよ」