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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

三ノ三

黒吉の眼の前には、義公の生意気な顔が浮んだ。

(畜生――)

彼はその幻影を撲り倒すように、口の中で呶鳴った。その時、黒吉の心には少年らしからぬ、激しい「嫉妬」が、火花のように散っていたのだ。

三ノ三

「葉ちゃん、俺ア死んでも義公なんかに、負けねエよ」

黒吉は、そう吐出すようにいうと、傷の痛いのも忘れて立ち上った。

「ほんとに負けないでね、あんたがここの立て役になったら、あたし嬉しいわ。……夫婦になってもいいわ」

「夫婦に」

流石に黒吉は、子供っぽい顔を、本能的な羞かしさに、一寸赭らめて、葉子を見返した。

「ほんとよ。……嘘だっていうの」

葉子は、むきになって、口を尖らせた。

「よし。じゃここで約束しよう」

黒吉は、照れ隠しにこういうと、小指を突出した。そうしてこの二人は、明るい櫓の上で、陽を一杯にあびながら、如何にも子供らしい方法で、固い堅い約束を交わした。

――この少年と少女の約束が、どんな形で彼等を訪れるだろうか……。それは全く不明であるけれども、この陰惨な、そして執拗な少年と、残虐な空気に、亢奮を見せる少女との間には、到底月並な終結は、望み得ないように思われる。