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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页
六ノ三
そりゃ俺なんか、醜いさ。義公なんかと比べもんになんないさ。けど、俺は、誰がなんといっても葉ちゃんが好きだ……」
「まア、黒ちゃん、何いうの。ほ、ほ、ほ、あんたあたしに恋してんの、大人みたいなこというのね。そんな話よしましょうよ」
葉子は、勝気な少女らしく、何んでもないことのように、いい切ると、早足で、支度部屋へ行って仕舞った。
黒吉は、その背後姿が、ぼーっと霞むと、膨らんだ瞼から熱いものが、頬を伝った。
(葉ちゃんと夫婦に……)
そんな、幻想は木葉微塵に、飛散った。
ほろほろと下る泪の中に、ハッキリとした葉子の離反が、鋭い熊手のように、胸の中を、隅々までも掻き廻し始めた。
六ノ三
「黒ちゃん、何、考えてんのよ」
ぽかん、と気抜けのように突立った儘、狂騒なジンタに聞き入っていた黒吉は、ギクッとして振向いた。
「なんだ由坊か、おどかすない」
「ほ、ほ、ほ、葉ちゃんじゃなくて、お気の毒ね」
そういって悪戯ッ子のように、体ごと笑ったのは、期待した葉子ではなく、同じ少女座員、薗道由子だった。
「何がお気の毒だい、そんな……」
「やアだ、知ってるわよ。あんた葉ちゃんと喧嘩したんでしょう」