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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

七

「ちえッ!」

黒吉は、眼の前に浮んだ由子の饒舌な顔を、首を振って、払いのけた。長々しく葉子の悪口をいう、由子自身の方が、よっぽど悪魔に近いように思われた。

(由公なんか、なにいってやがんだい)

彼は、無意識に肩を聳やかした。

七

あの暴風雨のような愛撫を、惜し気もなく、振撒いた年若き麗魔、葉子は、もうこの虫――黒吉――に対して、興味を喪失して仕舞ったのであろうか。

それとも、葉子一流の、執拗なたわむれであったろうか。

黒吉の心は、この重大な、最も重大な、と思われた問題を解決する前に、彼の眼前に現われた、もっともっと恐ろしい、この世のものとは思えぬ混迷の中に、叩込まれて仕舞ったのだ。

――空に浮ぶ夢――

ソレだった。

葉子との問題の為めに、一時、古びた写真のように生彩を失っていた、あの、空に浮ぶ幻像であった。それが甦えって来たのだ。生々しい現実味を帯びて、甦えって来たのだ。

白昼、大勢の観客を前にして、空を飛ぶ時、フト浮んだ、あの葉子の顔を発端として、絶対に見える筈のない「指環」の発見。それらの黒吉自身を、狂ったのではないか、と疑わせたあの「白昼の妖夢」