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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

そしてその機体から塵のような汚点が、ぽろりと一つ澪れ出た。

(黒吉が飛下りた――)

――一方、黒吉は、泳ぐようにして、銀翼を離れると、真暗な、手答えのない世界を、どこまでもどこまでも落ちて行った。

烈しく炸裂し動揺し奔騰する空気の中に、すべての色彩や感覚から開放された黒吉の頭には、一瞬、得体の知れぬ虹のようなものが火花を散らして爆発した――と、次の瞬間には、そこに見憶えのない、可愛いい娘の顔が現われ、ジッと微笑を含んで、黒吉を見詰めるのだった。

(誰?……)

もう一度見直そうと、グッと力を入れて体を捻った途端、足元でダイナマイトが囂然爆発したような、凄まじい音がした――と同時に、黒吉は、物凄い力で数十米も釣上げられ、空中を目茶苦茶に振り廻されるような気がした。

パラシュートが開いたのだ。

黒吉が、グッと体を捻った瞬間、無意識にパラシュートを開く綱を引いたのだ。

(あのまま夢に酔って、パラシュートを開くことを忘れていたら……)

勿論、真逆様に、地面へ叩きつけられていたことだろう。

彼は、力強い綱で宙に吊されてから、あの不思議な幻に陶酔していた自分を思い、ゾッと背筋を駛る悪寒を覚えた。