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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

今日パラシュートで飛下りた時に、ふっと葉ちゃんの顔を見たんだぜ……」

「まあ、そうなの――」

葉子は一寸恐ろし気な顔をした。

「気味が悪いわね……」

「気味悪くないさ……僕ア、僕アいつも葉ちゃんのことばっかり思ってたんだもん……」

「まあ……、あたしそんなこという人、きらいよ――どして男ってそうなんだろうなア、義公もそんなことばかりいうから嫌いなっちゃって、さよならしちまったんだし」

「義公が……」

(畜生! 義公が葉ちゃんを好きだなんて……)

黒吉は、思わず、松葉杖を握りしめた。

「どしたの、黒ちゃん」

「うん、いや、どうもしないよ」

「そお……」

「ね、葉ちゃん、俺んところへ遊びに来ないか……」

「そおね……」

「そう! ありがと。俺んところはね、研究所の正門の通りね、あれを真直行った左側の「広田屋」っていう荒物屋、その二階だよ」

「一人でいんの……」

「そうさ、勿論……」

「あら、えらいわね、よく一人でやってけんのね……その中、行くわ」

「ほんとだよ、きっとだよ、ね、……」

十ノ二

黒吉は、退院して以来はじめての朗らかさで、何か訳のわからぬ鼻唄を唄いながら、大人の様に、酔っぱらって帰って来た。