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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

てしまっているのであった。

すると、この鷲尾と名乗る老人が、凡そ不似合な恋愛にまで触れて来たのである。

「河井さん――、といいましたね、いかがです、恋愛についての御意見はありませんか」

「レン愛――?」

「そうですよ、男女の――。お若いあなただ、豊富でしょうが」

「いや、そんなもんありませんよ、ほんとに」

「おやおや。そうですかなア……。でも、その恋愛の本質について、考えられたことがありませんか、――例えばですねえ、電気って奴は、陰と陽とがあって、お互いに吸引する。が、同性は反撥する――ネ、一寸、似てるじゃありませんか。一緒になるまでは障害物を乗越えて、火花を散らしてまでも、という大変な力を出しながら、さて放電してしまうと、淡々水の如く無に還るという――、面白いじゃありませんか」

鷲尾老人は、なかなかに能弁であった。時たまグラスを口に運ぶだけで、この奇妙な恋愛電気学を、ながながと述べはじめたのである。

「あなたが、恋をしたとしますよ、するとですね、彼女があなたを如何に思っているかというのが、気懸りでしょう。そして、よりよく想ってもらいたい、と思いませんか、それが人情ですね、しからば――ですネ、一体どうしたらいいか、どうしたならば彼女の気持を、あなたに対して増大させることが出来るか?」