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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页

青空文庫

「なんか用――」

「ウウン、用なんかないわ。……あんた変な人ね、あたしが嫌いなの。そんなら、なぜあんな事、したの」

「違う、違うよ。俺ア葉ちゃんが好きなんだよ。――だけど、どうもどうもうまく喋べれないんだ……」

これは、黒吉の本音だった。

「まあいいわ、ここに坐りましょう」

葉子は、黒吉に席を明けると、二人は並んで、屋根組みの丸太に、腰を掛けた。

人が見たらば、曲馬団の子供が、日向ぼっこをしている位にしか、見えなかったろう。

「ゆうべはあたし知ってたのよ」

葉子は何故か、執拗だった。

「じゃどうして、寝たふりしてたの」

「だって。あの虫みたいな(あらごめんなさい、みんなあんたの事をそういうのよ、隅で小さくなってるから……)だけどあたし好きになっちゃったわ、あんたが」

黒吉は、彼女の口から「虫」といういやな綽名を聴くと、苦汁を飲まされたような気がして、黙って仕舞った。

「だから、いい事おしえて上げるわ」

葉子はそういって、垂らした足を、ぶらぶら、ゆらし始めた。

その度に、葉子のふくふくとした肩が、いくらか固くなった黒吉の体に触れた。彼はその柔らかい感触に、得体の知れぬ蠢めきを受け、又ゆうべの夢が、生々しく甦って来るのを感じた。