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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页
それに、それに、一ト月に一遍はきっと、それが激しくなるんだって――。ソンナ時よ、あんたを鞭でぶったりしたのは、エ、ウソ、嘘じゃないわよ、ちゃんと知ってるわよ、そして、あとで――ああ、さっぱりした――っていうのよ、凄いわねエ、恐いわ。あの人ったら、人が目茶目茶に撲られるのが大好きなんだって、方々に血が滲んで、ぐったり倒れているのを見ると、縋りつきたいようなんですって、あの人、いまに人殺しするかもしれないわ。
それから、こんなこともいったわ、人殺しするのに、ピストルなんて、莫迦ね、あたしなら短刀で刳ってやるわ、すごいでしょうねエ。って、葉ちゃんは綺麗なだけに、そんなこといって、眼が光るととっても、とっても……黒ちゃん黒ちゃんてば……」
黒吉は、黙って、この饒舌な由子の傍を離れると、立附の悪い楽屋の床板を小さく鳴らしながら、あてもなく顔見世台の方へ歩いて行った。
顔見世台の下には、町の子供等が大勢、何とはなく喋り合いながら、極彩色のペンキ絵に見入っていた。
そのペンキ絵には葉子と黒吉の縺れ合った曲芸姿が、まるで別人のように華やかに描かれていた。
(どんなに撲られたって、たとえ、殺されたって、俺ア、やっぱり葉ちゃんが好きだ)