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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
蘭郁二郎『火星の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:火星の魔術師、夢鬼、歪んだ夢、魔像、白金神経の少女、睡魔、地図にない島、宇宙爆撃、蝱の囁き。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 页
(葉子の顔……)
が浮んで、ハッと目をあけた、だが、相変らず体は、ベッドに釘附にされたように、ビクともしなかった、痛みと悪寒に似た苦痛とが、血の脈に乗って、ヒクヒクと足指の先にまで滲み透って行った……。
(葉ちゃん……)
譫言のように呟いても、辛じて、唇のはたが、かすかに痙攣するに過ぎなかった。
視力の鈍った左の眼一つで、遠近さえ判然とせぬ病室の天井を、ジッと凝視ていると、その中に、ぽっかりと、心持ち頬をこわばらした「おんな」の顔が写った。
(葉ちゃん!)
霞のかかったような瞳がもどかしく、パチパチ瞬きしたが、でもやっぱり紗を透したようにしか写らなかった。そして、その病室全体が、急に生暖く歪んで来ると、ほろりと熱い泪が、目の縁の繃帯に吸い込まれて、あたりがパッと暗くなった。
(おや、俺は泣いていたのか――)
そんなことを思いながら、その「おんな」の顔を、しげしげと見詰めたが、目のせいかそれは葉子ではないようだ。
(看護婦――)
とも思われたけど、その顔はどこかで自分が見た顔であった。
(看護婦なら、知ってる筈がない……)
目をつぶると、もう考えること、それ自身が懶うくなって来た。