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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
そういう状態の時、人はすべてを沈黙のうちに自分の力で整理するか、さもなければあけすけに感情の動機までを話して、それによって解放されるか、二つに一つしかないもので、寿江子のように波紋だけを周囲に訴えて、根源をおしかくしているのは困ると思います。東京のものがあの人ににくみをいだいていると感じているらしいが可哀想ね。にくらしいものならば、たとえば私がこうやって借金暮しの中から、どうして体を直す為の金を出してやるでしょう。私のようにどこにいても、どんな時でも自分の責任に於て、周囲の人の善意を信じて暮すものには、特に病気などした時、寿江子のような心持はどんなに蕭々としたものでしょう。治る病気も治りそうにない。この間少し元気をつけるような手紙を書いたら、気に入らなかったらしくておこってきました。普通ならあなたに一度手紙をやっていただきたいのだけれど、何だか今は一寸手がでなくて、折角あなたが書いて下すってもそれがどううつるか、わからないからまたのことにお願い致しましょう。そちらへ行けないのがそろそろ焦立たしくなってきました。庭へまだ楽に出られないのだから、若し乗物に乗ったら必ずひどくなることがわかっていて、やっと辛棒します。