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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

ボーシンとて、一介の仲仕であることに変りはないけれども、ともかく、金五郎は、二年間の苦闘によって、一つの組の切り盛りをする立場まで、こぎつけることが出来たのであった。

二年前、妻と二人、彦島を追われて、放浪の旅に出たとき、

「どこに行っても、これというて、心服の出来る親方というのは、居らんなあ」

と、述懐しあった。

裸一貫――力と頼むのは、自分たちの身体だけしかない。金があれば、とっくに支那大陸か、ブラジルかに渡っている。でなければ、なにか、商売でもはじめているかも知れない。また、学問があれば、ちがった道の歩きようもあろう。無学で、無銭、ということになれば、資本は、ただ若く力の溢れた肉体一つ、そして、労働が生活の方便となるほかはなかった。金五郎夫婦は、その身体を、粉にして、働いたのである。

「なんでも屋」が、「まあ、行ってごらん」といって、紹介状を書いてくれた。戸畑の永田組で、どうやら、二年間、落ちついたのであった。

二千トンの高野山丸の船橋を、初秋の風が吹き流れる。昼休みの弁当を食べ終った仲仕たちの多くは、甲板や艀などに横になって、昼寝をしている。