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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
に行ったとき、全身に、般若の総彫青をした若い男に逢った。その三ン下博徒に逢ったのが、お京を知るきっかけになったのである。
お京の素姓は、まだ、わからない。若い女の身で、鉄火の世界を渡り歩いていることだけは明瞭だが、どんな閲歴を持ち、どんな親分の後楯があるか、さっぱり、わからない。温泉地を経めぐって、地方の旦那衆をカモにしている渡り師のようにも思われるし、彫青の技倆も相当らしいから、そっちの方が本職のようでもある。そういえば、仇っぽい女彫青師の話を聞いたことがあるような気がする。しかし、それがこのお京であるかどうかはわからない。いずれにしろ、金五郎にとっては、謎の女である。そして、金五郎は、以前、お京に、危険な毒を感じていたのに、今、その毒気にあてられていながら、妙に、こころよい夢見心地になっているのであった。
総身彫青の男のことをきいてみると、
「ああ、般若の五郎さん、……さあ、どうしましたかねえ。風来坊だから、風吹くまま、どこをうろついてるやら、わかりはしないわ」
お京は、問題にしていない風だった。
二本ならべた模様のある腕が、鏡に映っている。金五郎の昇り龍が、お京の牡丹の花を、食べようとしているように見える。