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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
いんや、そればかりじゃない。永田組の者は、親方があんな風じゃけ、もう、気持のうえでは、金さんを親方と思うとる者が多いばい」
「おおきに」
「このごろ、変な噂がありよる。なんでも、聯合組じゃあ、永田親方のやり口があんまり悪いもんじゃけ、番下げ処分にするということじゃ。金さんが居るもんで、現場は他組以上じゃが、肝腎の親方がああじゃけ、永田組を取りつぶせ、という者があるらしい。聯合組の内輪同士というても、請負師仲間には野心のある人が居るけ、油断がならん。組が解散にでもなったら、大きな大事じゃ」
「早う帰って来ればよいのに、はがいい親方ですねえ」
マンは、一途に、永田杢次が恨めしくてならない。
次の日の夜、マンが、いつものように、土間に莚をしいて、ワラジを編んでいると、
「居やはりまッか?」
大阪弁の女の声で、入口から、案内を乞う者があった。
マンが立って行くと、
「おマンはん、久しぶりだすなあ」
「まあ、君香さん」
マンも、おどろいた。二年前、彦島で別れたきりである。
金五郎夫婦が彦島を追われる前日、新之助と君香とは、別府温泉に行ったとのことだった。その後、杳として消息を絶ち、誰に聞いても知っている者がなかったのである。