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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「あいつ、おマンに首ったけで、オンテレ・メンピンじゃけ。わたしなら、惚れた女でも、間男したら、泣寝入りはせんです」
「オコゼを釘にひっかけたような顔しとって、女に惚れる柄かい」
その言葉で、一座は、どっと、笑った。角助はむくれた。
「そのほかには?」
「おマンの兄とかいう谷口林助、門司から、夫婦子供づれで、頼って来たんじゃけど、こいつは、人がええばっかりで、まるきりの意気地なしです。玉井金五郎が、若松で、玉井組の看板をあげたと知って、前の永田組の子分のほかに、方々から、いろんな奴がやって来たらしいですな。金五郎の郷里の四国から、鍛冶屋の清七という頓馬が来て、道具番をやったり、下関の彦島から、「ノロ甚」という綽名の、将棋は馬鹿に強いが、さっぱり仕事の出来ん大とぼけが来たり、それから……」
角助の口にかかると、玉井組は、一人残らず、能なしの役立たずで、堅められているように聞えた。
お京は、笑いをこらえて、素知らぬ顔で、聞いていた。
「三井物産では、今度、玉井に、焚料口を、一口、持たせるという話を聞いたが……?」
「わたしも聞きました。ほんとらしいです」
「他所者に、縄張の中で、御馳走の撰り食いをされちゃあ、他の者の顔は、丸つぶれじゃないか」