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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「まあ、わたしに委せといて下さい」

角助は、そういって、自信ありげに、うなずき、指の短い両拳を握って、反っくりかえらせた胸を、どすんと、たたいた。

島村ギンは、ゆらゆらと、立ちあがった。

「しんきくさい話は、やめじゃ。どんちゃん騒ぎをしようや。……芸者衆、踊らんか」

そう喚くように、叫んだ。また、「若松名所を知らない人に」と、歌いだし、三味の音につれて、踊りはじめた。肥満した身体つきに似あわず、柔軟な手足のこなしである。それは、この「ドテラ婆さん」の前身を、物語っているもののようだった。

子分たちも、皆、立った。三人の芸者もまじって、円陣になった。にぎやかに、踊りながら、紅白だんだらの幔幕の内側を、ぐるぐる廻る。

お京も、踊りの列のなかにあった。

(聞きしにまさる大姐御だわ)

ギンの豪快で、すさまじい女親分ぶりを、ひそかに、腹の中で、感歎していた。お京とて、鉄火の世界を渡り歩いた女であるが、どこに行っても、ギンのような女親分を見たことがなかった。女侠客といわれる者は、他にもあるが、「ドテラ婆さん」のような、男か女かわからない、人を殺すことを屁とも思っていない、執拗残忍な女に逢ったのははじめてだ。