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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
(金五郎さんは、殺されるかも知れない)
その不安が、湧いて来るのだった。
お京は、若松検番から、やはり、「お京」という芸名で、芸者に出ている。博多の待合から逃げられた金五郎に対して、長期作戦の腹を定めて、若松に来たのである。
監獄から帰った森新之助と、君香とが始めた「飛鳥」という置屋で、三味と踊りの出来る、年増芸者を探していると聞いて、そこへ抱えられた。金に窮してのうえではないので、自前でもよいのだが、身分を隠すため、わざと、借金をした。新之助も、君香も、「よい妓が来てくれた」といって、すこぶる、よろこんだ。二人とも、まだ、金五郎とのことは、なにも知っていない。
今日は、花見の客を、「ドテラ婆さん」と知って、志願して来たのである。ギンの方は、芸者を五人、花見線香をつけて出せ、というだけのことで、格別、お京に注意もしていなかった。
「ああ、小便がしとうなった。芸者衆、肩を貸せ」
踊っていたギンは、そういうと、傍にいたお京と、染奴という若い芸者とを、引きよせた。両脇に抱きよせるようにし、太い両手を、二人の肩から首に巻きつけた。重くのしかかって、足どりも怪しく、幔幕の外に、出た。