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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「飛鳥」に来て以来、誰にも見せたことがなかったのである。
染奴は、さすがに、仰天した。顔色を変え、二三歩、後すざった。
「「蝶々牡丹のお京」といったら、関東では、すこしは知られた姐御さ。それが、こんな若松みたいな田舎に来たのも、みんな、金五郎さんのためよ。染奴さん、あんた、命が要らないなら、金五郎さんに、おちょっかいをかけなさい。それから、今日のこと――あたしの素姓や、金五郎さんとのこと、ちょっとでも、人にしゃべったら、やっぱり、命がないものと、お思い」
染奴は、袂で顔を掩うと、はげしく泣きだした。
その夜、「飛鳥」では、豪華な饗宴がひらかれた。
五十畳敷の広間には、今夜の主客である玉井金五郎と、江崎満吉とを中心に、この街の名だたる顔役連中が居流れた。両方の関係者を合して、約三十人、芸者が十五六人、料理は三の膳までついた最上等献立て、酒とビールは、無尽蔵に、席に運ばれた。
「まず、今夜は、めでたいよ」
右隣りの席にいる森新之助が、にこにこと、そういうのを、
「うん、まあな」
金五郎は、ぶっきらぼうに、相槌を打って、あまり浮かぬ顔をしていた。
左隣りには、「六ゾロの源」