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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「あんたと、変な仲になるちゅうことは、ちょっと、なあ……」
「アッハッハッハッ」
と、お京は、男のように、笑いだした。それは、しかし、ほんとうに、おかしいのやら、腹立たしいのやら、すて鉢なのやら、自嘲なのやら、よくわからない。お京自身も、切ない胸のうちをおさえかねながらも、持ちまえの負けじ魂で、いたずらに、男の膝下に叩頭することは、きらいであった。けたたましく笑うことによって、なにかをごまかし、心機一転を装うのが、精一杯といってよかった。
突然、哄笑されて、呆気に取られている金五郎を、あわれむ眸で眺めながら、
「おどろいた。金五郎さんて、思いのほかに、うぬぼれ屋だわ。変な仲になる――なんて、アッハッハッハッ、……あたしが、あなたに惚れてると思ってるのね。惚れて、若松まで追っかけて来て、可愛がって貰おう、と考えて、こうやって、お願いしてると思ってるのね。勘ちがいしないでよ」
「そんなら、お京さんの一生の願い、女の一念というのは、なんじゃね?」
「彫青よ」
「彫青?」
と、鸚鵡がえしをして、お京の顔を、あらためて、見なおした。
「わかってるじゃないの。武蔵温泉で逢ったとき、ちゃんと、わたしに約束した癖して。