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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

仲仕の方も負けずに、今度は船頭の女房を槍玉にあげる。メキシコ丸の連中が、船橋や甲板の上で、面白そうに聞いている。

「おいおい、お前たち、そんな歌喧嘩すんなよ」

舷の欄干から、上半身をのぞかせて、金五郎が呶鳴った。にこにこしている。

「そんなら、オヤジのを、いっちょ、聞かせてくれえ」

城三次が、棚の下段からあおむいて声をかけた。

「よし、歌うぞ」

金五郎は、機嫌がよい。

若松みなとの

ゴンゾは花よ、

粋な手さばき

日本一……

どっと起る歓声と、拍手。笑い声。石炭がばらばらと飛ぶ。金五郎は、なお、つづける。

雛壇の上に、ならんで立っている甚七と、清七とが、港内の一点に視線を集めて、低い声で話している。

「あの梅丸には、ドテラ婆の組が来ちょるが、角助は見えんようにあるのう?」

「甚公、お前、知らんのけ? 角助は、バクチで、小倉監獄にかまうとるぞな。もし」

「へえン、それで、このごろ見んと思うた。ドテラ婆に、うちのオヤジを殺すことを請負うちょったそうなが、……」

「そらそうと、時やんは、姐さんを迎えに行くちゅうて、広島に帰んだが、うまいこと、つれて戻りきるじゃろか?」

「オヤジも、危いことをするなあ。