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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

……ほんとじゃよ。おれが、なんで、玉井さんのような立派な男を殺すわけあいがあろうか。それなのに、玉井組の若い衆が、おれを恨んで、おれの家になぐりこみを掛ける、ちゅう噂を聞いたもんじゃけ、おれはびっくりして、飛んで来たんじゃ。……な、ごりょん、おれを恨むのは筋ちがいばい。おれは、心から、玉井さんの災難を気の毒に思うとるんじゃよ」

早口で、追っかけられるように、ギンは弁解する。

歯を食いしばって、相手を睨みすえていたマンの眼から、すこしずつ、強い光が消えて行った。刀の柄を握りしめていた右手からも、力が抜けた。

(さし殺して、自分も死のう)

そんな張りつめた気持でいたのに、マンは、いつか、ささくれだった復讐の念をうしなっていた。

女侠客として、勇名のとどろいている「ドテラ婆」、それにしては、意外にだらしのない態度である。堂々と、金五郎を嘲笑し、止めを刺しに来たのかと思った。子分を十四五人も引き具している。ところが、ギンは、ひたすらに、弁明につとめるばかりだ。ふるえてさえいる。つれて来た子分は、玉井一家の仕返しを恐れる、自分の護身のためらしい。戦意などは微塵もない。