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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

と、なにやら、うなずく。

金五郎は、男のするがままに、まかせていた。清七は、気味わるがって、何度も、相手にするな、という風に、眼くばせしたり、湯の下で、金五郎の尻をつねったりした。

やがて、怪しい男は、診断を終った医者が、判定をくだすように、妙なことをいいだした。

「立派な体格だ。おれが女なら、首ったけになるよ。百姓には惜しい。龍の彫青でもしたら、大前田英五郎のような親分になることは、うけあいだ」

この男が土地の者でないことは、言葉からでも、態度からでも、明瞭だった。道後温泉には、旅の者が多く入湯に来るから、他国者のいることは珍しくない。しかし、こういう、生粋の江戸弁を使う、全身総彫青の男などは、よく湯町に来る金五郎も、これまで、見かけたことはなかった。

金五郎は、好奇心をおぼえて、からかってみる気持になった。

「土ン百姓の子でも、親分になれますか」

「そりゃあ、なれるさ」

「実は、わたしも、侠客が好きなんです。講談本を読んでいて――清水の次郎長や、国定忠治のような親分になりたいなあ。……って、考えたことはあります」

「とんでもねえ、兄ちゃん、そりゃあ、考えちがいだ」