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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「どうしてです」

「次郎長や、忠治、ってえのは、いけねえや。侠客の屑さ。喧嘩を売り物にする奴は、駄目だ。ほんとうのいい親分は、喧嘩をしねえな。だから、大前田英五郎ってえのは、えれえよ」

「大前田英五郎というのは、知りませんね」

「そうよ、斬った張ったをやらねえから、講談や浪花節にはならねえんだ。つまらねえ侠客というのは、みんな、派手なものさ」

金五郎は、はじめは気味のわるい印象を持ったこの男に、すこし、興味と親しみとを感じて来た。

「親分さん」

と、呼んでみた。

男は、ケッ、ケッ、ケッ、と、鶏のような声で笑いだして、

「おれは、親分じゃねえや」

「そんなら……」

「三ン下さ。……だが、なにか用かね?」

「親分になるのには、どがいにしたら、ええでしょうか」

「さあ、なあ、……? 一口では、いえんなあ。……兄ちゃんは、すこしは、やんなさるか」

「なにをです?」

「これさ」

男は、右手で、骰子を投げる恰好をした。しかし、金五郎は、その意味がわからなかった。

「それ、なんのことで?」

「ははあ、兄ちゃん、まだ、ズブの素人だな。丁半さ。ばくちだよ」

「やったこと、ありません」

「どうだ、兄ちゃん」