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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

……玉井君、君は、今度の上京をええことにして、三菱の本店に行くつもりじゃろ?」

「そうしたいと考えて居ります」

「行くことならん」

「参ります」

「止めれ」

「止めません」

「君など行っても、誰も相手にしやせん。それに、もう、新川岸壁に、炭積機を作ることは定まってしもうとるんじゃ。行っても無駄じゃよ」

「無駄とは思いません。誠意を披瀝して話せば、わかって頂けると考えとります。それでなくてさえ、食うや食わずで居る沖仲仕が、この上、炭積機でも出来たら、餓死の外はありません。なんとかして、思い止まって貰うよう、本店のえらい人に逢うて、歎願するつもりです」

「君は時代おくれじゃよ。文明が進歩したら、なんでも機械化することはわかっとるじゃないか」

「それは、わかっとります。洞海湾には、ホイスト、クレエン、鉄道桟橋などの岸壁設備、沖にも、ローダー、ポンツウンなどがある。それは新時代の然らしめるところでしょう。しかし、多くの沖仲仕が餓死することも顧みられないで、機械が作られることが、文明の進歩とは思いません。一番大切なものは、なんというても、人間の命ですよ」

「君は、それじゃから、馬鹿じゃというんじゃ。