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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
湯を出ると、うどんを食べてから、彫青男から教えられた「四国屋旅館」に行った。散財は後廻しにした。この宿屋は、色町の中央にあって、料亭も、貸席も兼ねている。
例の男が、玄関まで、迎えに出た。盆の開帳されている奥座敷へ、案内してくれた。
襖がひらかれた瞬間、金五郎は、思わず、かるいおどろきの声が出た。
こういう光景を見るのは、はじめてである。湯槽の中では、四五人、仲間が来ていると聞いたので、狭い部屋で、こっそり、こじんまりしたバクチが、行われるものとばかり思っていた。ところが、今見ると、まるで、宴会場だ。
三十畳ほどの広間の中央に、四十人ほどの客が、ずらりと、二列になって向きあっている。列の間に、長い茣蓙が敷いてある。もう、早くから、はじまっていたらしく、座には、殺気のようなものが、漲っているのが感じられた。むんむんする人いきれがただよっている。
金五郎がおどろいたのは、そればかりではない。博徒の中に、女が五六人いるうえに、男客の中には、顔見知りの者が、二三にとどまらぬことであった。
彫青男は、きょろついている金五郎を、会心そうに眺めながら、
「兄ちゃん、豪勢なもんだろう。