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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
遊びにも、いろいろあるが、これは、一番あたりまえの丁半だ。この街の堅気の旦那衆も、たくさん見えてござる。どんな素人でも、すぐに覚えられるという奴だ。丁方か、半方かになって、好きなだけを張ればいいんだ。……兄ちゃんは、どっちになさる?」
「どっち、といいますと?」
「丁かい? 半かい?」
骰子の目の偶数が丁、奇数が半くらいのことは、金五郎も知っていた。
「さあ、どっちがええかなあ……?」
「九半十二丁、といってな、二つの骰子の目の組みあわせじゃあ、丁の目が、半より三つ多いことになってるんだ」
「金坊」と、横から、清七が袖をひいて、「丁にしいな。なんぼうでも、多い方がええぞな」
「半にしましょう」
と、金五郎は、いった。
半方の列の間に、わりこんで坐った。
「やあ、これは」
と、何人もが挨拶する。伊予絣の呉服屋、魚屋、質屋の隠居、材木屋――日ごろは半纏や前だれがけで、勤勉に店で働いている商人たちが、眼の色変えて、バクチに熱中している姿に、金五郎は異様な昏迷をおぼえた。丁方の中に、※の顔まで、発見した。
でっぷり肥った五十男が、親分らしい。丁方の中央に胡床をかいて、悠然と、巻煙草をくゆらせている。