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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「そうですか」
「原田に、なんか、相談したいことがあって、寄るつもりじゃったばって、あんたが先に行っとるらしいけん、日を変えて、また、といいなさって、帰らしゃった」
「わたしがここに来とること、母は知っていましたか」
「「猫婆さん」とこで、聞きなさったとかで……」
その言葉に、勝則は、ぎくッとした。
(光丸と、母は、逢いはしなかったろうか? 「猫婆さん」が、なにか、母に話しはしなかったろうか?)
脱れられぬ最後の場に、すこしずつ、じりじりと、運命の環がちぢまって行く。勝則の胸奥には、すでに、はっきりとした一つの決意は出来ていたとしても、このことの成就の困難さが、言語に絶するものであることも、彼にはよくわかっていた。
「失礼いたしました」
礼を述べて、原田邸を辞した。
小降りになった雨の中を、傘なしで歩きながら、
(原田さんへの母の用件も、このことだ)
それを考えて、胸が痛かった。
虚実
視察旅行に上京していた市会議員一行は、無事、帰若した。
待ちかまえていた原田雲井は、ただちに、玉井金五郎に談判した。しかし、原田の弁舌と熱心も、堅い金五郎の鉄壁から、にべもなく、弾ねかえされた。