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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そして、耳のつけ根まで赤くなった。どっと、囃すような笑い声がおこった。
それから、何度か、勝負はつづけられた。
金五郎は、四五回目には、もう、呼吸をのみこんでしまって、張ったり張らなかったり、金額も、増したり減らしたりした。
時間の経つのが、わからなかった。
チン、チン、チン、チン……
急に、時計の音に気づいて、柱時計を見た。十一時である。びっくりして、立ちあがった。
「こら、いかん。親父が心配しとるけに、帰ろう」
「勝ち逃げかね?」
彫青男が寄って来て、笑いながら、いった。
「家が遠いけに、失礼します」
「そうかい。そんなら、また、おいで。一週間ほどは、毎晩、やっとる。兄ちゃんは、しこたま取りこんでるから、途中、気をつけてな」
「はい、お邪魔いたしました」
金五郎の胴巻はふくれあがり、妊娠腹のようになっている。そのうえに、助広の短刀をさした。
清七と二人、また、空馬車に乗って、帰った。散財はやめにした。
月明である。冬の夜空に、松山城が浮きあがり、なにかの花の香が、街道いちめんに流れている。
その年が、明けた。
松の内に、黒石家では、金五郎を養子に迎えるめでたい式が、一種、狂気じみた盛大さで、もよおされた。