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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

と彫ってある。両端に、一個ずつ嵌めこまれた大きな骰子には、どちらも、六の目が正面に出ている。上部には、「おでん・すし・割烹」。角助を殺した松川源十の店だ。刑を終えて、監獄を出て来ると、金五郎は資金をあたえて、おでん屋を開業させた。はじめは小さかったが、思いの外、繁昌して、すこしずつ大きくなった。寿司もはじめ、二階には小座敷もしつらえて、小料理屋風になっている。

「看板の字は、オヤジが書いて下さい」

源十が懇願するので、金五郎が、例の肉太字で、書いてやったのである。板は、廃船になった玉井組の小伝馬船の底板を使った。マンが、夫婦喧嘩をして、広島に逃げ帰ったとき、「六ゾロの源」は、女仲仕のジュンを、女中に雇って来たことがある。そのジュンと夫婦になって、もう子供が四人ある。

「こりゃあ、玉井の旦那、お揃いで……」

そういって、にこにこ顔で迎えたのは、胡蝶屋豆八であった。

「豆八ッあん、よう、ここで逢うなあ」

「ようじゃありまッせんばい。旦那が来るころと、網張って、待っとったとですよ」

「なんか、用じゃったな?」

「大きな大事の起ったけん……」

「またかね。豆八ッあんの大きな大事は、聞き倦いたよ。