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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
青ざめた美しい顔に、光丸はもう涙を浮かべていた。
「あんた、要之助さんのこと、話しとらんのでしょ?」
「ええ、……だって、……」
「きっと、勝則さん、誰かから、あんたに許婚のあること、聞いたのよ。でも、ええやないか。いつまでも隠しとってすむことやなし、勇気を出して、勝則さんに逢いなさいよ」
「一人では、怖い。姉さんも、いっしょに行って、……」
「馬鹿ねえ。いやよ。あんただって、本気でやったことなら、自分で、ちゃんと、結着をつけなさいよ。もう、ごまかしは出来んようになっとるとばい。要之助さんも、誰からか、……きっと、友田喜造さんから、……勝則さんとあんたとのこと聞いて、東京から、帰って来るとかよ。ウフフ、新学期で、上京したばっかりなのに、もう、嫁女の浮気の噂で、学校どころじゃないらしいわ。来年の卒業を待たんで、すぐ祝言したい。なんて、いうとるげな。面白うなって来たなあ。……良ッちゃん、頑張んなさいよ」
「でも、……」
稽古場から、幾度も、光丸を呼ぶ声がした。
「さあ、元気を出して、稽古をおし。姉さんは、もうすんだけん、ちょいと、逢いびきに行って来る。……良ッちゃん、今が一番大事なところよ。