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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
しっかりしなさい」
光三は、どんと、妹の肩をたたいておいて、小走りに、階段を降って行った。
力のない姿で、のれんをくぐると、藤間いせが、
「光丸さん、気分でも悪いの?」
「いいえ、別に……」
「そんなら、すぐに、……」
「はい」
清元「夕立」を踊る相手の妻太郎と、稽古台に上った。妻太郎が男役、光丸は御殿女中、一本の蛇の目傘の中に、二人は入る。地唄に、三味がまじって、踊りはじめたが、心に憂悶のある光丸は、幾度も手をまちがえて、師匠から、はげしく叱された。
……掟きびしき白玉の
露にも濡れしことはなく……
すこしずつ、調子に乗る。
蛭子神社の大鳥居の前で、瞑目して、勿体らしく、柏手をポンポン打っていた胡蝶屋豆八は、後から、軽く背中をたたかれた。
頓狂に、ふりかえった。仏頂面で、
「なんじゃ、光三さんか。びっくりしたよ。折角の願かけが、中途半端になるやないか」
「殊勝らしい顔して、なんの願、かけとるの?」
「あたりまえのことを訊きなさんな。このごろ、「チーハー」以外に、神さんに頼みごとがあろうかい」
「豆八ッあんは、なに買うたの?」
「いわれん、いわれん」
「あたしの、今日、当てんと承知せんぞ。