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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

光三は、別のことを考えていた。

(妹と勝則さんとのことを、玉井の旦那は、知っとるのじゃろか? 知ったら、どんな顔をするか知らん?)

そんな気持で、玉井金五郎の真面目くさった顔を見ると、親というものが、妙に、間が抜けて見えて、吹きだしたい衝動をおさえかねた。

翌日も、鬱陶しい雨模様であった。

マンは、早く起きて、学校に行く子供たちのために、朝食の準備をする。弁当を詰めてやる。長年変らぬ毎朝の習慣だ。一人、若い女中がいるけれども、子供たちのことだけは、自分でやった。また、ババンもいるので、子供たちの世話は、よく行きとどく。一番下の千博が十二歳であるから、もう、そんなに手を煩わす子供はいない。

マンは十人の子供を産んだ。

「勝則が出来るまでは、お前は石女かと思うちょったが、出口がついたと見えるのう」

金五郎から、そういって笑われたように、ほとんど年子のように、次々に産んだ。長男の勝則と、末子の千博とは、十三しか年齢がちがわない。

男、女、男、女、女、女、女、女、女、男――の順である。しかし、四番目の一枝を三つのとき、六番目の国子を十四にもなってから、病気で失った。