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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

友田喜造一派が、栗田銀五を総大将にして、今日の温習会に、なにかの妨害をくわだてているという情報を入手したためであった。

「おマンさん、ちょっと」

森新之助は、マンを一人、劇場の横にみちびいた。あたりを憚る切迫した語調になって、

「金さんは来とるな?」

「まだじゃけど、もう来るころよ。聯合組の人たちと揃うて行くと、いいよったけ」

「来たら、いうちょいておくれ――今日は、おれに取っての大事が起るかも知れん日じゃけ、気をつけといてくれ。――ちゅうて」

「どんなこと?」

「どんなことかは、まだ、おれにもわからん。興行のことでも、友田派とは、前々から、いろんないざこざのあっとるのは、あんたもよう知っちょることじゃが、四五日前、友田の使いというて、栗田銀五がやって来てな、今度の選挙の演説会場に、日若座を貸してくれ、ちゅうもんじゃけ――もっと早よう、いうてくれりゃよかった。もう、中立団と政友会との両方に約束してしもうて、昼も、夜も、一日も空いた日がない。……そう答えたんじゃ。そしたら――早よう来ても、遅う来ても、民政党にゃ貸す気はないとじゃろう? ふン、温習会ども派手にやるらしいが、後で、吠え面かくなよ。