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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
……そんな啖呵を切って、帰ったんじゃ。こっちも、それくらいのことは覚悟のうえじゃっけ、なにいうか、と思うとったんじゃが、……どうも、今日の温習会で、なんか、たちの悪いことを企らんどるごとある。……それでな、おマンさん、金さんに、力になって貰いたいけ、用心して、終りまで居ってくれるように、よう頼んどいて。な。……おれもじかに逢うて、話しはするけんど……」
「わかったわ」
新之助は、また、島崎とつれだって、木戸から、劇場の中に入って行った。
「ははあ、あれが、「チーハー」の島崎勇次か。なるほど、男は小いばって、全身が剃刀のごと、殺気がみなぎっちょる。肺病とかいうこッちゃが、命短しで、世をすねたかな?」
原田雲井は、引きかえして来たマンに、鹿爪らしい顔つきで、そんなことをいったが、やがて、二人とも、下足番に履物をあずけて入場した。
階下も、二階も、超満員だ。いずれも弁当ごしらえ、酒を持ちこんでの見物なので、賑やかを通りこして、騒々しいことおびただしい。一つずつの桟敷の桝の中で、どこも小宴が張られているが、劇場全体で、大饗宴が行われているに異ならなかった。団体のところは、桝の仕切りを取りはずし、広くして飲んでいる。