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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
と、君香は、「女髪結い処」の門燈の出ている曲り角から、別れて行った。
公会堂の前まで来たとき、金五郎は、背後から、呼びとめられた。
ふりかえった。
「玉井の大将、ちょっと、顔を貸して下さらんですか」
遊人風の巨漢である。鳥打帽をかぶっている。(またか)と、舌打ちする思いだったが、みちびかれるままに、暗い公会堂裏について行った。
二十人ばかりの無頼漢が、ぞろぞろと、あらわれた。金五郎を包囲した。鳥打帽が号令をかける。
と、全員、抜刀した。
シュウシュウという、すき間風のような音とともに、引き抜かれた日本刀の切ッ先が、二十本あまり、金五郎を中心に突きだされた。公会堂の小使室から洩れて来るかすかな明かりに照らされて、整然とならんだ刀が、八百屋の店先の白ネギの列のようである。抜刀隊は、これも、誰かが号令を降したかのように、いずれも、諸肌ぬぎになった。シャツを着ている者は一人もなく、男たちの素肌には、夜目にも、全員、さまざまの彫青がほどこしてあるのがわかる。
金五郎は、苦笑した。
(おれも、おどけ芝居の名人じゃが、向こうにも、おれに負けん役者が居るとみえるわい)