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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
肌をぬいだ。シャツもぬいで、彫青をむきだしにすると、地面に寝てしまった。
仰向いたとき、星を無数にちりばめた夜の天が、顔の真正面に開けた。こんな風にして、夜空を眺めたことははじめてだ。美しい。きらめいている星の一つ一つが生きているようである。巨大な銀河の帯は光を密集させて、南北に走り、手をあげて払えば落ちそうに、近々と、見えた。一瞬、金五郎は、お伽の国に来たような、夢幻的な気持になった。二十人もの抜刀隊が周囲にいることも忘れた。
「よい覚悟です」
その人間の言葉で、現実につれもどされた。
大の字に寝たまま、あたりを見まわした。二十本の刀のどれにも、星が映っている。
「早よう、料理せんかね?」
ひやかすように、うながした。今度は、答がなかった。金五郎は、うすら笑いを浮かべて、眼を閉じた。
(暴力団のやることは、定まっちょる)
脅迫と、暗殺と、決闘と――それが、幾十度、くりかえされて来たことであろうか。しかし、それは、その方法の単純さと危険さとによって、つねに、人間のもっとも大切な生命を軽侮して来たのだ。金五郎は、そのことへの憤りで、半生を過ごして来たといってよい。