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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

それに、十郎さん、息子の方は、もう、ちゃんと出来てる女がある。あたしと「夕立」を踊った光丸さんという芸者」

「へえエ、もう、そんなことまで調べあげたのかい?」

「蛇の道は蛇さ。それに、あたし、光丸さんと踊りながら、あの妓が、妊娠してることに気づいたよ。踊るのが苦しそうだったし、肩で息ばかりしてたわ。おまけに、幕が閉まったら、楽屋で倒れてしまって、ゲエゲエ、あげてた。きっと、つわりよ。でも、二人の仲、どっちの親も反対してるらしいの。……十郎さん、金五郎さんだけではなくて、勝則さんの方にも、ひと肌ぬいではどうだね?」

「冗談は止してくれ。そうは手が廻らねえや。それでなくても、こんなお役目、ごめん蒙りてえところだ。因果な役を引きうけたよ。お京さんと、親父とから頭を下げられたんじゃあ、後にも引けねえからな」

「そのかわり、ちゃんと、日当になったじゃあないか」

「ヘン、金なんて、おりゃあ、欲しくもねえや」

「お前さんが、脅迫したり、守ったりするのを、玉井さんがたいそう不思議がってたってさ」

「もう、芝居は嫌になったよ」

外見では、二人は、仲のよい、温泉宿のつれこみ客のように見える。