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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

七八人いる運動員や、子分連中もしょげかえって、あまり口をきこうとしない。白鉢巻、白襷の伝令隊も、手持ち不沙汰というよりも、はがゆそうな情なそうな顔で、しょんぼりしている。次々に票が降りて来て、景気よく走りだす他候補の伝令を、いまいましげに眺めて舌打ちする。口を尖らしてささやきあう。

「友田喜造の奴、もう、二四〇票も出やがった。誰があげな奴に入れるとか?」

「あいつの運動員が、報徳銀行で、手の切れそうな一円札を、三千円も両替えしよったちゅうぞ。それでのうて、あげな鬼のような奴が、あれだけ票の出るわけがあるもんか」

「淫売屋の青河は、自分の店のエロ切符を配ったちゅうばい」

「中山さん、玉井さんは何票出ましたか?」

と、高野がきいた。

「まあだ、九二票です。七〇票くらいまで、バタバタ出たとに、そこからすぱッと止まりました。……こげな筈はないとじゃが、……?」

後の方はひとりごとになって、小首を傾けた。

「こら大きな大事たい。井上安五郎さんも、まだ八〇票代じゃ。ゴロゴロを落せ――ちゅう、敵の作戦に引っかかってしもうた。政友会も、大貝、児島、などという大物ば落した。