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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「まだ、あきらめるのは早い。新谷勝太郎が射って来とるんじゃけ、まちがいない。まだ、何羽も見たが、射ちそこねたといいよった。どこかに巣があるらしいとも、いいよった。藤の実の減りかたのはげしいのを見てもわかる。雉子は、藤の実を蓄めて、食糧対策を講じるとじゃけ、遠方には行っとらん。もうすこし頑張ってみよう」
「金さんは、最後の一票まで、ねばることの名人じゃけ、まあ、金さんのいうことを聞こう。じゃが、くたぶれて、腹が減ったわい。ここらで、一休みして、弁当にしようや」
「そういやあ、おれも腹ペコじゃ」
「あたしもよ」
と、百合香もいいだして、食事をすることになった。杉の根の熊笹に坐り、持参の弁当を開いた。朝食なのか、昼食なのか、わからない。
「百合香、お前、すまんが、東南院に行って、お茶を貰うて来てくれんか」
「行って来るわ」
気軽に答えて、森林の小径を降って行った。快活に、なにか西洋の歌らしいものを口吟みながら、擬宝珠の屋根の方角へ、姿が消えた。
それを見送っていた新之助は、金五郎をふりむいた。
「金さん」
ひどく真剣な顔つきをしている。
「あン?」
「これを、あんたに、あげよう」