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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
舟底に、坐る。親船は一段と大きく、高い。給水船なので、甲板が平である。その前部に、大きな祭壇が設けられ、さまざまの供物が飾られている。立ちのぼる線香の煙。この船には、初盆の遺族、来賓、主催者等が乗り、十数人の僧侶がならんで、読経をする。銅銭、鉦、木魚の音。
「出発」
金五郎は、親船の舳に立って、船団を曳航する小蒸気船に、合図をした。
一声の汽笛とともに、舟の列が、港の中心に向かって、動きだす。進みはじめる。
「美しいなあ」
金五郎は、かたわらのマンを、かえりみた。
「ほんとに」
まったく、それは美しかった。
夜の洞海湾を、ゆるい速力で進む船列は、どの舟にも、一杯に、華麗な燈籠提灯の明かりがみなぎって、波にその光をうつしている。やがて、湾内を一巡し、中ノ島の横を抜けて、切戸の燈台の見えるあたりまで、出て行く。
そのころになると、人々の手によって、蝋燭のついたままの提灯が一つずつ、海に流される。上部と下部とは丸い舟のようになっているから、提灯は沈まない。光を学んだ数百の燈籠が、人魂の楽しい舞踊かのように、プカプカと、ゆれながら、海上をただよう。
「また、来年、おいで」