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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
はたして、危惧は実現した。
数日後、新之助が、島崎勇次をともなっておとずれて来た。
「やあ、玉井さん、お寒いことで、……」
島崎勇次は、笑顔をつくって、なにげない様子で、そう挨拶した。
しかし、金五郎は、警戒した。この精悍な博徒の、もともと、肺患から来る、不健康な青白い皮膚に、不気味な鳥肌が立ち、歯が、ときどき、ガチガチと鳴っているのを見れば、ただごとではないことがわかる。なにかの非常の決意をしていることは、疑いを入れなかった。
「お揃いで、なにごと?」
そうたずねたが、用件はわかっていた。
(決闘をする気じゃ)
最近、「チーハー」賭博は、数回にわたって、挙げられた。闘鶏場も、鉄火場も、開帳のたびごとに、不意討ちを食った。売りだしかけていた島崎の縄張りは、ほとんど、壊滅に瀕している。日若座の事件以来、友田一派の攻勢と、圧迫とは、露骨になった。島崎の「男の顔」が立たなくなっているのである。
十日ほど前の深夜、島崎勇次の家に、一箇の屍骸が、人力車で送りとどけられた。それは、島崎の可愛がっていた子分の一人であったが、全身を、膾のように、斬りきざまれていた。