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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
俥ひきは、ただ、蛭子神社の裏で、四五人の抜刀した遊人体の男たちから、
「この男を、チーハーの親分の家まで、つれて行け。行かんと、命がないぞ」
刀で、そうおどかされて、ふるえながら、運んで来たにすぎない。俥の蹴込みは、血の海になっていた。
「玉井さん、折り入って、御相談があって来たとですけんどなあ」
「いうて下さい」
「実はな」と、新之助が、声を落して、「金さん、お前、ドスを、仰山、集めちょったろうが? それを、勇さんが貸して貰いたいというとるんじゃ。いんや、譲って欲しい、ちゅうて、……」
「ありゃ、それは、惜しいことした。一本もないごと、……いんや、例の助広一本だけ残して、……原田雲井君にやってしもうたよ。ほんの二三日前たい」
「やった?」
「原田君の「若松新聞」が、つぶれかかっちょるというもんじゃけ。あの男は、新聞がなかったら、蟹が爪をもがれたようなもんじゃでなあ。おりゃ金は持たんし――刀でも売んなさい。……ちゅうて、みんな、寄附してしもうたよ」
「ふウン、……?」
新之助は、鼻の奥で返事をしたが、その眼には、疑いぶかげな色がちらついていた。
「新さん、ほんとのことですよ」