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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
という、一段と目立つ、巨大な花輪があった。しかし、その子分たちの名は一つも見えない。吉田の花輪を取りかこんでいるのは、井上安五郎、原田雲井、大庭春吉、藤本喜八郎、玉井金五郎、島崎勇次、松川源十、「猫婆さん」――つまり、反吉田派の花輪ばかりだった。
金五郎は、その理由を、新之助から聞かされた。
「友田一派は、今度の大会から、みんな抜けてしもうたんじゃよ。こういう芸事まで、片肱張らんでもよかろうに、世話人が集まって、駒場係りが二日間の出演順を定めてしもうて、いよいよ、幕をあける段になってから、急に、出らんといいだした。はじめから、ケチをつける計画じゃったことは、わかっちょる。それで、間際になって、また、番組をやりかえるやら大騒ぎした」
「それで、おれの番が、二日目の昼にくりあがったとじゃな」
「辻木惣八は、お前も知っとるとおり、可祝という芸名で、若松じゃあ一二を争う語り手、本人は出たがっとったのに、友田が命令をくだして、差しとめてしもうた」
「じゃけど、吉田親分の花輪だけが来とるというのは?」
「吉田さんは、いま九大の病院に入院しちょる。二十年ほど前に、やっぱり、大学病院で、胃癌の手術をしたんじゃが、今度は肋膜炎で、だいぶん、ひどいらしい。