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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

その吉田さんが、新聞で、日若座のこけら落しの記事を見たちゅうて、花輪をとどけてくれたんじゃ――こげな、新しい劇場が建つちゅうようなこた、敵も味方もない、若松全体のためにええことじゃけ。……病院で、寝とって、そげいうたちゅうが、……子分どもは、親の心、子知らず、たい」

不穏の噂が街に飛んでいたが、第一日目は、なにごともなく、終った。

のど自慢の天狗連中が、プログラムにしたがって、次々に、得意の芸題を語った。

真打として語った矢野津ノ子の「双蝶々廓日記・八幡引窓の段」を、金五郎は恍惚となって聞いた。まだ二十五六歳の青年であるが、その語り口の巧妙さはほとんど神に入っていると思われた。

三味線を弾いているのは、女の豊沢玉輝。金五郎や新之助の師匠である豊沢団助の未亡人、その撥の冴えも、あざやかだった。

「新公、あれは、どこの者な?」

「ありゃあ、お前本物じゃよ。小倉の男じゃが、天才とか、神童とかいうんじゃろうなあ、十二歳のとき、竹本津太夫に見こまれて、一度は大阪「文楽」につれて行かれて、津ノ子という芸名を貰うて、跡を継いだこともあるんじゃよ。元老じゃ。なんか、師匠と喧嘩して、飛びだしたちゅうこっちゃが、……」