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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
数日後、金五郎宛、東京から、電報が来た。
「オヨウトフウフニナルコトニナツタ」オヨウトノレイノヤクソクハトリケサレタシ」カラシシノ十ロウ」
般若の五郎がこれを読んで、
「おれよりも、倅の奴の方が上手だ」
と、笑った。
五郎は、玉井家の庭番のような形になった。
数年が、過ぎる。
昭和十一年正月、吉田磯吉、永眠。
「吉田天皇」と称されていた磯吉大親分は、昭和七年、衆議院議員を勇退していたが、十一年一月、虫状突起周囲炎を手術した結果が思わしくなく、中旬、にわかに、病状悪化した。
金五郎は、吉田邸に、見舞に行った。今度は玄関払いを食わされなかった。
「玉井君、よう来てくれた」
と、弱りはてていた吉田磯吉は、病床に伏したまま、心からのように、金五郎を見ていった。
「ほんとに長い間、いろいろ、お世話さまになりました」
「まるで、もう、おれが死ぬみたいな挨拶じゃなあ。いや、今度はおれも覚悟しとる。玉井君、君とはじめて逢うたときのことを、おれはよう憶えとるはい。下関の彦島で……そうじゃ、もう三十年も前になる。上海コレラ騒ぎのときじゃった。あんとき、なんぼか骨のありそうな若い衆じゃと思うとったが、とうとう、一生、おれに楯をつき通したなあ。