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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

おれが死んだら、君がさぶしかろうよ」

「親分、それはちがいます。親分は、わたしは尊敬しとりましたのですが、子分衆が、……」

「子分がどげした?」

「あんまりようない人が居って、あなたは大変損をされました」

「なにいうか。おれの子分は、みんな、ええ奴ばっかりじゃ。そんなこというなら、もう帰れ」

一月十七日、鬼籍に入ったとき、享年七十歳であった。

同じ年の二月十九日、玉井組創立三十周年紀念の宴が催された。金五郎は派手にやることを好まず、自宅で、ごく内輪の者ばかりを招いて内祝をした。それでも、百人に近い客だった。子分たちは別にやったのである。

大庭春吉が司会をやり、金五郎と話しあって、いやがるババンを正面の座に据えた。永田ヨネはびっくりして尻ごみしたが、かつがれるようにして、大黒柱を背に坐った。小さくなっている。

「玉井組の根本は永田組、そのババンのために、打ちこみます」

大庭の音頭で、「蛭子打ち」がされた。

「エーイ、シャンシャン、エイ、シャンシャン、エーイ」

めでたい席にはかならず附きものの、若松独得の打ちこみである。

ババンの眼にみるみる涙があふれ、顔を掩うと、うれし泣きに泣き出した。