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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

そこで私は父への思い出もふくめて、パリーで「懐中ランプ」を買って来ることに定めたのである。

ヨーロッパの旅は約二ヵ月だから、帰国するころは『花と龍』上下二巻が美しい本になっているころであろう。早く母に見せたい。――駄目だ。また涙が出て来た。泣き虫で仕様がない。父も母も泣き虫だったが遺伝らしい。もうペンを擱こう。

昭和二十八年五月二十七日。東京にて。

解説

火野葦平

『糞尿譚』以来、郷里若松を舞台にした小説はたくさん書いたけれども、その中で、『花と龍』は一番長い作品であると同時に、私としても力をこめたものである。父玉井金五郎と母マンとの生涯を書きたいということは、久しい間の宿願であったが、読売新聞に連載を依頼されたので、やっと思いを果すことが出来た。この小説は、昭和二十七年六月二十日から二十八年五月十一日まで、三百二十四回、連載された。

しかし、この小説が書かれる機縁を考えてみると、当時の読売新聞文化部長細川忠雄氏に感謝しなければならない。パージが解除された直後、池上徳持町の家(長谷健と同居生活時代)に訪ねて来た細川氏は、読売にも連載を書いて欲しいといったが、すでに、ひとつのプランをたずさえていたのであった。