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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

同時に、あらわれた中のしんに、火がともっている。石油くさい。

「さあ」

機械の火をさしだされて、マンは、鼓動を感じながら、くわえたまま、煙管の雁首を近づけた。火を吸いつけてから、かあッと、顔が、真赤に燃えた。耳まで、赤くなった。

「おマンさん、これ、懐中ランプというもんじゃ。アメリカ通いの汽船で、事務長から貰うたんじゃが、あんたにあげよう。わたしは、煙草をのまんけに、用がない」

「いいえ、要らんです」

「遠慮せんで、貰うときなさい」

と、チヱがいった。

「実をいうと」と、金五郎は、快活な調子で、「わたしは、煙草をふかす女なんて、好きじゃない。じゃけど、林助さんから、あんたが、どうして煙草のみになったか、ちゅう話を聞かされて、急に、あんたが好きになった。それで、この懐中ランプを、あんたにあげる気になったんじゃ」

マンは、兄林助が、どんな風に話したのか、と、気がかりになった。

煙草好きであった父善助のため、専売局の眼をかすめてまで、煙草葉を集めて、キザミを作ってやった。マンは、父にのませるために、まず、自分が火を吸いつけてから、父に煙管をわたした。それが習慣になると、はじめは、苦くて、からくて、むせかえっていたが、しだいに熟練するとともに、いつか、煙草に味が出て来た。