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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 頁

青空文庫

四

「――お侍様。もし……お侍様」

彼のうしろを、呼び止める女があった。

四

「只今、あそこの茶店で聞きましたら、小篠の私の家をおたずね下さるお方だそうで、息をきって、追いかけて来たんですよ」

女は、そう言って、三五兵衛のそばへ寄った。

上方路を経て来た眼のせいか、甲府の女は肌があらいと思ったが、この女は、一見してそうでなかった。三五兵衛の癖として、女を見ると、すぐ肌の粗密が直覚にのぼる。それから容貌にうつるのだった。

「おや、この女は歯が白い?」

三五兵衛は、それに気がついてから、一層注意を払いだした。

もう人の女房である筈の年頃だが、鉄漿をつけていない上にあどけなくしているので、存外見た眼では若々しいが、二十六か七ぐらい――その辺だろうと彼は見ていた。

「あの、御案内申しましょう。この森の出端れから細い道へはいると、二町ぐらいは近うございます」

「では、そなたは最前、あの店に居合した女ではないか」

「はい、鳥沢の宿まで、父と一緒に参りまして、私だけ先へ帰って来ましたので、ちょっとあそこへ寄って、用を頼んでおりました」

「父と仰っしゃると?」

「鮎川の仁介でございます」